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【特別対談第1回】上出長右衛門窯・上出惠悟×結わえる代表・荻野芳隆

【特別対談第1回】上出長右衛門窯・上出惠悟×結わえる代表・荻野芳隆

「現代社会は、好きなものは何でも食べて、欲しいものは何でも手に入れて、欲望だらけ。その姿は、まさに”鬼”のよう。そんな”鬼”でも、寝かせ玄米を食べて喜んでいる」
結わえるの創業10周年を記念してリニューアルしたギフトボックスなどに登場している”鬼”にはそんな意味が込められています。

結わえる創業10周年を記念してつくられた「鬼箱」

このモチーフを描いてくれたのは、140年続く九谷焼の窯元でありながら、近年では、洒落っ気あるモチーフをあしらった作品や、気軽に自分で九谷焼の絵付けが楽しめる「クタニシール」などが注目を集める上出長右衛門窯の六代目・上出惠悟さんです。

上出長右衛門窯の六代目・上出惠悟さん

今回は、結わえる代表・荻野が窯元の六代目である上出さんをお迎えし、結わえるの新しいモチーフを作ることになったきっかけや、上出長右衛門窯と結わえるが考える「伝統文化と現代生活を結わえる」ことをテーマに対談した模様を3回に分けてお届けします。

 

――上出さんとの出会いは?

蔵前・結わえる本店にて


荻野芳隆(以下荻野):
蔵前の結わえる本店が今の場所に移転したときに、ディレクターからの提案で器を上出さんのところ(上出長右衛門窯)で揃えたんです。

上出惠悟(以下上出):その前後くらいで、「上出長右衛門窯 窯まつり」に来ていただいて、そのとき1回挨拶させていただいたんですけど、お祭りでお客様が多くて、僕が時間がとれなくて。1分ぐらいお話ししたような気がします(笑)。

荻野:僕はその後も上出さんの活動はSNSとかでずっと見ていて(笑)。活動内容とか、デザインが、めっちゃイケてんな、いつか何か一緒にやりたいなって思っていました。

――念願のタッグだったわけですね。

荻野:そうです。結わえるは蔵前の「結わえる本店」と、「いろは」とオンラインストアがありますが、どのお店でもこのモチーフを見たら「寝かせ玄米の結わえるだ」ってわかるようなものが欲しかったんです。それをデザインパートナーのFUKAIRIデザインに相談したら、「そういうものはデザイナーより、アーティストにお願いした方がいいね」ってなって、上出さんにお願いすることにしました。

上出:荻野さんとは一瞬しかお会いしていなかったのですが、なんとなく”鬼っぽい”という記憶があったので(笑)、このお話をいただいてすぐに鬼のモチーフが浮かんで、サクサク進みましたね。

――鬼のモデルは荻野社長だったんですね(笑)!

上出:いやでも、牙があるとか、怖いイメージではないですよ! 昔話に出てくるようなかわいらしい鬼のイメージです。これ(鬼を指差して)、なんとなく似てません?

荻野:言われたことあります、これっぽいって(笑)。”鬼も喜ぶ”っていう言葉はどこから?

上出:言葉は荻野さんの本を読んでからですね。現代は食べ物が豊富にあるからつい食べ過ぎてしまう、昔の人からしたら”鬼”みたいだなと思うんじゃないかと。でもそれを認めながら寝かせ玄米で健康になろうよっていう部分で、”鬼も喜ぶ”っていう言葉が浮かびましたね。

荻野:今回は僕の”鬼っぽい”イメージからこのモチーフができたということですけど、いつもはどういう発想で作品にしていくんですか?

上出:
だいたいいつもインスピレーションだけでつくってみて、あとで意味が加わったりすることが多いですね。我知らずで始まることはいろんなものをつくっている中でよくあることなんです。今回も最初のインスピレーションのまま、鬼のラフ画をipadでペン描きしたのをお見せしましたよね。

荻野:これが届いたとき「これでラフなのか!?これからどうブラッシュアップするんだろう」ってかなり驚きましたよ(笑)。

上出:ラフ画はデジタルでささっと。完成版は、デジタルで描いた下書きを清書して、和紙に糊で線を伏せて染色する「筒描き」でなぞったものです。

荻野:完成版をもらったとき、玄米を美味しそうに食べる鬼と”メリハリ寝かせ玄米生活”のイメージが繋がって、自分が望んでいたものドンピシャだったのでさらに感動しましたね。

上出:荻野さんが”鬼”っぽいというイメージはあったのですが、どんな鬼にしようってなったときに、結わえるさんの雰囲気に合わせてちょっと洒落っ気を持たせたかったんですよね。それで大津絵の有名な鬼(※鬼の寒念仏)をモチーフにしたんです。

【大津絵】江戸時代に近江(滋賀県)の大谷・追分周辺で描かれていた作者不詳の民画のこと。

荻野:骨董屋さんとかで掛け軸が売っていたりしますよね。

上出:大津絵の鬼は、お坊さんの格好をして念仏を唱えているという、風刺的なところも好きなんです。形や格好だけ念仏を唱えて僧侶のふりをしても中身が鬼では意味がない、という人間の心の有り様を表した風刺画なんですよ。でも鬼にも救いが必要だって側面もたぶんあって。そういう日本の洒落っ気や遊び心が昔から好きで。

荻野:いろんなものが繋がって、この鬼のイラストはすんなり迷わずにできたんですね。逆に、なにか作品をつくっているときに、おりてこない、なかなかつくれないっていうことはありますか?

(つづく)

>>次回は上出さんの仕事に対する思いや、伝統工芸メーカーのリアルな”今”についてお聞きします。【第2回】

PROFILE

■上出惠悟/KEIGO KAMIDE

1981年石川県生まれ、2006年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。同年より、1879(明治12)年創業の九谷焼窯元である上出長右衛門窯の後継者として、職人と共に多くの企画や作品の発表、デザインに携わる。2014年合同会社上出瓷藝(かみでしげい)設立を機に本格的に窯の経営に従事。東洋から始まった磁器の歴史を舞台に普遍的で瑞々しい表現を目指すと共に、伝統や枠に囚われない柔軟な発想で九谷焼を現代に伝えている。主な仕事として、伝統柄をアレンジした「笛吹」や、スペイン人デザイナーを招聘した「JAIME HAYON×KUTANI CHOEMON」シリーズ、九谷焼の転写技術を活かした「KUTANI SEAL」などがある。また個人としても磁器を素材に作品を制作し、幅の広い活動を展開している。
https://www.instagram.com/kamidekeigo/

■上出長右衛門窯/KUTANI CHOEMON

明治12年(1879年)、九谷焼中興の祖である九谷庄三の出生地、石川県能美郡寺井村に創業。東洋で始まった磁器の歴史を舞台にしながら、職人による手仕事にこだわり、一点一線丹誠込めて割烹食器を製造している。深く鮮やかな藍色の染付と九谷古来の五彩(青、黄、紫、紺青、赤)を施し、古典的でありながら瑞々しさを感じられる九谷焼を提案。年に一度窯を全面解放し、絵付体験や蔵出し市などをお楽しみ頂ける窯まつり(5月連休)を開催している。
http://www.choemon.com

コラム製作 まっちゃん

広島県出身。大学卒業後、興味のあった中国へ語学留学し、そのまま4年間暮らし、改めて日本食のおいしさと日本文化の優しさを実感。帰国後すぐに上京し東京で13年間働く。結婚後長野県東御市に移住。宗教・歴史に興味があり、長野県移住後は諏訪地域の神仏習合や縄文遺跡にはまって散策しています。普段は玄米食で、一汁三菜の常備菜を食べ、早寝早起きの健康ライフを送っています。
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