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【後編】特別対談 “林業と結わえる” 古川ちいきの総合研究所 古川大輔 × 結わえる 荻野芳隆
読み物 よみもの 林業 特別対談

【後編】特別対談 “林業と結わえる” 古川ちいきの総合研究所 古川大輔 × 結わえる 荻野芳隆

古川ちいきの総合研究所の代表取締役 古川大輔さんは、結わえる代表 荻野芳隆とは船井総合研究所株式会社時代の同期で、それぞれ林業と食・健康という異なるアプローチでともに「地域を元気にしたい!」という熱い思いで、切磋琢磨してきた仲間です。
結わえるは「気持ちいい生活と気持ちいい世界を結わえる」ことと「伝統的な生活文化と現代の生活文化を結わえる」ことをビジョンに掲げ、玄米を中心にした食事から体を想い、食材を想い、生産者を想い、自然を想うことを結わえています。
前編では古川さんのお仕事や林業に携わるようになった理由をお話いただき、中編では林業の課題や歴史に踏み込んで話していただきました。後編では、林業の未来や林業を結わえることにについてお話ししていきます。

前編はこちら
中編はこちら

■TOPICS

・山を所有したい若者が増えている?
・林業でうまくいっているビジネスモデル
・山にコンセプトがあるかどうか
・林業の長い時間軸を感じる
・林業を結わえたい

山を所有したい若者が増えている?

結わえるスタッフ:最近のキャンプブームで若い方が山を購入してみたものの、整備の大変さから手放したいけれど簡単に手放すことができなくて困っているというニュースを見たことがあるのですが、これについてどう思いますか?

荻野:日経MJに載っていた記事かな?

古川:同じ記事を見たかもしれない。それについては2つの視点でお答えします。1つは林業そのものの時間軸を理解してほしいということです。山はFXのように今日買ってすぐ明日売り買いするようなものではありません。

代々地域で大事されてきたものを守るとか、先人に対して畏敬の念を思うこととか、自分が手を入れて次の世代にパスするとか、そういうことを考えて権利と義務を果たす者が所有権を持つということだと思います。そういう視点に立って、山を所有することに対して責任が持てますか?と問いたい。

もう1つは、責任とかはわからないので、一回借りてみましょうという方法も提案できます。僕の仲間で、フォレスト(森林)をレンタル(賃貸)するという「forenta(フォレンタ)」という、山の比較的平たいところに区画を作って、年間の利用料を決めてレンタルするというビジネスを始めまして、私も一部の地域でお手伝いをしています。用途は、いわゆるワイルドキャンプに近いものとしています。

レンタルといってもほぼ自由に使えるので、山からいろんな木を持ってきて小屋を作ったりターザンコースを作ったりして、利用者は年間6万円〜10万円ぐらいで好きに遊べるという。8割以上の利用者は年間契約を更新していてうまくいっているようなので、僕の仲間はさらに面積を広げようとしています。

荻野:借りるか買うかって議論になっていましたね。

古川:forenta(フォレンタ)は、借りると買うの間くらいの概念ですね貸し出す前に利用希望の人と面談をしてメリットとデメリットを感じながら森とかかわっていただくようです。山林を所有することは権利と義務の両方があります。だから借りるという方法もありますよ、ということはかなり伝えています。

林業でうまくいっているビジネスモデル

荻野:林業でうまく回せている会社や地域があったら教えてください。

古川:大きく2つあります。1つは老舗林業者に多い形態で、地域に山林をたくさん所有し、都市部に不動産をたくさん所有し、様々な事業ポートフォリオの中で別に資産を持ちながら事業をしているので資産家林業と私は言っています。

都市部の不動産の調子が良い時は山の調子が悪いし、その逆もあるけれどそれでもいいと思って、時間単位は100年以上で運営しているような形態の会社です。

もう1つは、僕が農家林家と表現している形態なんですが、農業と林業を掛け算して、マイクロ林業というか、スマート林業というか、いわゆる農業の六次化産業のような感じでやっている会社です。

持続可能って、環境面と経済面と2つあると思っていて、物理的に環境が守られているかということと、経済的に守られているかということは、継続する上でとても重要だと思います。規模は関係なく、回っているのであればそれでいいし、林業だけにとらわれなくていい。この点を上手に伝えていくことが必要だと考えています。

荻野:資本家林業は、そもそも代々続いていたり、かなりの資産があると思うけれど、後者の方は頑張り次第でなんとかなりそうに思えます。実際そういうところは増えているんですか?

古川:増えています。後者の方は山林所有者ではなく、山を預かってまとめてプランナーのように仕事をされている会社もある。僕はそういう会社のサポートをしています。例えば木材をちょっと加工してオフィスの内装材として提案しましょうとか、キャンプ場の経営をしましょうとか。最近お付き合いを始めた会社は、森を管理することで水がきれいになり、そのきれいな水で農業を始めたり日本酒を作ったりして多角的に地域の事業を始めています。

荻野:農業でも六次産業化ってよく言われていますが林業でも起きているんですね。例えばスギ・ヒノキを植えて林業を始めた林業者がしっかり会社として成り立っていくには基本的にどうしたらいいか、という方法論はありますか?

古川:基本的にはきちんと計画をして道をつけて施業して次の山を十何年後に残して、また育っていくものを見て、それを順番にやっていく。単純かもしれませんがそういう事業活動が大事で、無理だと思われるところへ行政がサポートに入っていけば良いと思っています。

林業者にとって、嬉しいなって思う瞬間が2つあって、間伐した木材とか搬出した木材が売れてお金になったということと、もう一つは10年後は楽しみになるいい森を残してくれたね、と言われることなんですよ。

山にコンセプトがあるかどうか

古川:若い頃、浜松市の天竜林業地域に行った時に、80代の林業の先輩から、「古川くん、いい山って何だかわかるか?」って問われて、「いや、わかりません」と答えたら、「いい山主はな、コンセプトがあることだ」って言われて感動したのを覚えています。

左右の画像で右側の森は何年に見えますか?

荻野:これすごいですね、山の持ち主の違いでこんなに違うということですか?

古川:山主にコンセプトがあるかないか、時間軸でどこでどう動いたかということがこの違いになって現れてます。右側は40〜50年の森で一回ぐらい間伐が入っているかな。左側は何度も間伐された200年以上の森なんです。

問題は、右側の山でも40〜50年はいっているので、あと何回間伐したら左側のような森になるのだろうか?ということです。もう間伐しても(ひょろひょろの木になり過ぎて弱くて成長しないという点で)間に合わないかもしれないから一気に伐採してバイオマスエネルギーの資源として使って、広葉樹の森を作るために植林しようという考え方もできるし、まだ間に合うから、次の世代またその次の世代のために間伐をして永続的に200年の山を作っていこうという考え方もできます。

林業の長い時間軸を感じる

荻野:今回古川さんに林業のことを話していただいて、皆さんにちょっとでも林業に興味を持ってもらいたいと思ったのは、僕自身が全く林業に対して興味がなかったけれど、古川さんの誘いで川上村や紀伊半島に行って、こういうことが起きているんだ、こういう問題があるんだということを知って、個人として、結わえるとして何ができるんだろうと考えるきっかけをもらったからなんです。

こんなに語っている古川さん自身も、東京大学大学院生までは興味がなかったんですよね。

古川:興味がないどころか、知りませんでした。

荻野:だから林業と、普通に暮らしている人たちの間にものすごく断絶があるなと感じています。

古川:僕は1200年の森を作ってきた高野山でも仕事に携わっていて、境内案内人の資格を持って案内しているんですけれど、来月お客様も案内することになっていて、最近だと金融系で短期で利益をどうこうと考えている人たちに1000年の時間を感じてもらう研修なんかやっていますよ。

荻野:それはすごいですね。

古川:僕はこの仕事を始めて15年から20年ぐらいになって、昔手を入れた山が15年でこんなふうに変わるんだということを感じられることがあって、良い仕事のサポートができたと思うことができたんですけど、そういうふうに時間軸を長く持って森の変遷を見るのは若ければ若いほど見れる時間が長いから、特に若い人に自分と関わりのある森をどこかに作ることをやってほしいと思っています。

そういう時間軸で見るものを次の世代に伝えるということは、林業は木材を製材してそれが部材になってホームセンターに並んでいくらで売られている、ということではなくて、その源流に何があるのかということを感じることが大事だと思います。食と一緒ですね。

僕と荻野さんって、地域活性化したいというか、源や根本が好きだよね。

林業を結わえたい

荻野:僕が古川さんのところに初めて行ったのが15年前で、その2年後ぐらいに創業して蔵前に一号店を作ったときに、古川さんのところで色々した体験や、聞いたお話もあって、トータルとして持続可能な世の中ということを考えたときに、林業は必ずかかわっていくものだから、今後結わえるとしても林業にかかわっていこうという思いを強くして、一号店のテーブルやカウンターを全て古川さんにお願いしたんです。

古川:酒樽風の椅子も作りましたね。僕にとっても結わえるさんがコンサルティング以外で納材した初めてのお客様だったんですよ。

荻野:その後の店舗もオフィスの机も全部古川さんに手配してもらっています。結わえるとしていつも伝えていることとして、良い醤油や良い味噌を買う人が増えれば増えるほど、それを支える伝統製法の醤油屋さんや味噌屋さんが継続していくし、それと同じで、みんなの意識が変わって、例えばダイニングテーブル1枚を国産材にしてみようとか、柱1本でも良いからそうなっていけば、日本の林業も持続可能になってくるんじゃないかと思っています。

古川:僕が知っている飲食店の経営者は、食材にはこだわっても、器や箸にはこだわらないことが多い。お店に入って、お料理が美味しいな、接客もいいなと思ってふとテーブルを見ると、その素材でいくのかっていうことがあったりしてミスブランディングだなって感じることがある。その点、荻野さんは源やつながりにこだわっているんですよね。

荻野:あとは結わえるとしてきっかけになればいいなと思ってやっているのが、間伐材や端材を使った割り箸です。中国産の竹製の割り箸の5倍ぐらいの値段がするけれど、その箸をお客様が使うことによって、間伐材がお金になっていき、さらに森もよくなっていくと信じています。

古川:僕ができることとして、直球の林業ではなくて、周りの隣接する業種、例えば観光だったり、器だったり。今度「峠(とうげ)」という飲食店を大阪でオープンする予定なんです。山の上にも下にも人を作らずっていうことで、川上から川下まで山や森を感じられる場所が作れたらなと思っています。

荻野:ぜひ寝かせ玄米を導入してほしいですね!

古川:この後その話をぜひさせてください(笑)。つながっているというのがわかりにくいところをつながりやすくしたいなと思っています。荻野さんとともにあと何十年かわかりませんが、生きている間にいろんな人に一人でも多くの人に源流の大切さとか、森を見て欲しいなと思いますね。

荻野:今回は林業との断絶を少しでも縮める第一歩ができればいいなと思って、結わえるは健康、美容、ダイエットと何から入ってきても良いんだけれど、玄米を食べようというところから始まって、この寝かせ玄米って美味しいんだなっていうことを感じたら、いい調味料が欲しくなって、食生活がちゃんとしてくると、今度はいい飯椀と汁椀がを揃えたくなって、揃えたら今度は木のテーブルが合うなあと感じて、そのあたりから木に興味を持ってくるような提案をこれまでもしてきたと思うけれど、さらにそこから山に興味を持って、林業にまで広がるといいと思います。

そんな感じで私たち一般に暮らしている生活者と林業の断絶がだんだん埋まってつながってくればいいですね。

対談の模様はYouTubeでも!

▼古川大輔さん著書「森ではたらく!27人の27のしごと」(学芸出版社)
http://www.amazon.co.jp/dp/476151339X

▼古川ちいきの総合研究所
https://chiikino.jp/

▼ちいきのBAR峠
https://chiikino.jp/togate/

▼ちいきのgallery&Café峠
https://www.instagram.com/chiikino_gallery.cafe/

▼yosinohijiri聖
https://yoshino-hijiri.com/

コラム製作 まっちゃん

広島県出身。大学卒業後、興味のあった中国へ語学留学し、そのまま4年間暮らし、改めて日本食のおいしさと日本文化の優しさを実感。帰国後すぐに上京し東京で13年間働く。結婚後長野県東御市に移住。宗教・歴史に興味があり、長野県移住後は諏訪地域の神仏習合や縄文遺跡にはまって散策しています。普段は玄米食で、一汁三菜の常備菜を食べ、早寝早起きの健康ライフを送っています。
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