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【お出かけルポ】第4話:素人なのに和裁してみた。ついに完成!着物の「これまで」と「これから」と。
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【お出かけルポ】第4話:素人なのに和裁してみた。ついに完成!着物の「これまで」と「これから」と。

今回は完結編となる第4話。

和裁の知識ゼロ、全くの素人の状態から裏地のない単衣(ひとえ)の着物を縫いはじめて前回、着物の胴体の部分である身頃(みごろ)の背縫いと脇縫いまでできました!

ここからは「衽(おくみ)」という細長いパーツを縫い付けたり、衿や袖を付けていきます。

どんどんパーツを縫い付ければすぐに完成!

…かと言うと、そう簡単ではなく、その工程は多岐に渡ります。

 

和裁の縫い方は家庭科で習う並縫いと同じようにまっすぐ縫う「運針」でパーツ同士を縫い付けるだけでなく、生地を断ち落とした部分を内側に三つ折りにして縫い付ける「三つ折りぐけ」や生地の耳端をそのまま降り倒して縫い付ける「耳ぐけ」など様々。

さらに縫う場所や縫い方によっては生地の糸2〜3本をすくって細かく丁寧に縫うことも重要で、縫い目を目立たせずに綺麗に仕上げていきます。

縫って、くけて、を繰り返していきますが、女性ものの着物は全長が自分の背丈ほどもあり、衿(えり)などはさらに2m近い長さになるため、中々根気のいる作業の繰り返しになります!

さらに衿を縫い付ける部分は、そのまま縫い付けると生地が引きつれてしまうので、コテを使って生地をひっぱるようにくせを付けて、糸の向きを変たりと、綺麗に仕立てるためのポイントをいくつか押さえながら縫い進めていきます。

洋服であれば色々な形がありそれぞれに型紙がありますが、和服の仕立てにはそれがなかったり、その独自性は長きに渡りほぼ同じ形のまま継承されています。

長い歴史の中で培われた知恵、伝統文化とも言えますが、一方でそれは裏を返せば、「進化しなくなってしまった」とも言えると岩佐先生は言います。

着物がいまの形になるまで

着物に限らず、暮らしに関わる衣食住すべてのものは、いまの形になるまでに、「進化」を遂げてきました。

では、着物はどんな進化を遂げてきたのか。
実は、いまの着物の原型は平安貴族の着物が変化したものと言われているそう。確かに十二単は今の着物と着物自体の形は似ているように見えますが、その着方はかなり違いがあります。

かつて幾重にも重ねた着物の裾を引きずりながら着られていた着物は、帯ではなく紐状のもので留められ、結び目は体の前の方にあったそう。

その着物の形は外を出歩かない平安貴族だからこその形。そのたため、武家の時代へと変化すると共に外を出歩くのに適した形に変化していきました。

まず、着物の裾を引きずらないようにするためには、裾を短くする必要がありますが、様々な織りや染めを施された美しい着物を短く切ってしまうのではなく、長いままお腹のあたりでたくし上げるように折りたたんで結び留めて着ることで長さを短くしたそうです。

これが女性の着物の着付けにだけある「おはしょり」の起源と言われています。「なぜ女性の着物だけおはしょりがあるのだろう?」と、ずっと疑問に思っていましたが、こうした起源に由来するのですね。

着物をたくし上げることで、裾を引きずらずに済みますが、今度はその状態を維持するのに問題が出てきました。
着物の左右がはだけないようにするだけでなく、上下に折りたたんで結び留めるためには、これまでのように細い紐だけではうまく留めることができなくなってしまう。

そこで、折りたたんだ生地をしっかりと留めるために、帯状の太い布で結ぶように。すると今度は大きな結び目が体の前に出来てしまい、動きにくく邪魔になってしまう…
それならば結び目を後ろ側へ…と、こうして今の帯の形とその結び方へと変化していったのだそう!

着物を着るのに苦労する「おはしょり」と「帯結び」のはじまりは、こうしたライフスタイルの変化に影響を受けて進化してきた「服飾史」を紐解くことで見えてくるのだと教えていただきました。

しかし、そうやって暮らしの中で進化してきた着物文化の移り変わりは、戦後を境に止まってしまいました。それはやはり、着物が「ケ」の日常の衣服でなくなってしまってからに他なりません。

自ら日常的に着ようと思わなければ、七五三や成人式、結婚式など「ハレ」の日しか着る機会がなくなってしまった着物。ましてや、自分で仕立てる人はほとんどいないいま、かつてのように暮らし手の手で進化を遂げる機会を失ってしまった。

かと言って和裁士さんも、着物を仕立てることで生計を立てているためそういった試行錯誤に時間を割くことが難しい。

一方で、着物ブランドのsousouさんなど、新しい着物の形を提案している会社も。岩佐先生自身も教室のHPやyoutube、ブログなどを活用して、和裁の知識や新しいアイディアを発信しています。

先生がyoutubeで紹介する、レースで作る夏用の羽織の作り方。

着物は特に、「この素材は〇〇には着ていけない」という決まりごとが多く、伝統や格式高いイメージを持たれがちです。
しかし、日常的に楽しもうと思えば、着物本来の良さを活かしつつ「もっと手軽に快適に着たい」「新しい形やデザインがほしい」と、アップデートを重ねる余地がまだまだたくさんあるのだと気付かされます。

ついに完成!

細かな工程をすべてご紹介はできませんが、脇縫いの処理や衿付け、共衿かけ、袖付け、裾の仕上げなどができたら仕上げに入ります。

最後に先生にアイロンかけをしてもらい、ついに着物が完成しました!

縫い上がった翌日に予定があったので、さっそく縫い上がった着物を着て隅田川へ。今回は浴衣風に長襦袢なしで、更紗模様の赤い帯を合わせました。

「自分で作る」ということを通して、そのものの成り立ちを知るだけでなく、素材のこと、歴史のこと、一枚の着物を通して様々なことを考え、気付かされました。

さいごに

12mもの長い布だったものが、「着るもの」になったんだという感動と共に、着物を仕立ててみて感じたことがあります。

着るもの食べるもの、暮らしに必要なものはほぼ全てと言っていいほど、お金を払えば誰かがやってくれる時代になったけれど、一方でそれをわざわざお金と時間を使って学ぼうとする人がいる。

それは、自分の手でものづくりをする楽しさや、それを人と共有する喜びは、どんなに技術が進化しても変わらずに人の暮らしや心を豊かにするのだということ。そして、その経験を通して、大変さやありがたさを理解することで「本物」を選ぼうとする意識が芽生えるということです。

 

それは、「昔に戻ろう」という過去回帰どころかむしろ、これからの暮らしを豊かにしていくヒントがあると感じました。

 

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■岩佐和裁

http://iwasa-wasai.com/index.html

今回お世話になった岩佐和裁教室。

1回4時間のお稽古で2,000円から、自分が縫いたいものを自分のペースで縫うことができるお教室です。初心者の方でも運針の練習から教えていただけ、着物の知識が深まるだけでなく、着物を通して日本のこと、暮らしのこと、様々な気づきを得られると思います。

ぜひご予約してみてはいかがでしょうか?

 

 

コラム製作 ゆうな

絵を描くこと、ものづくりが好きで高校からデザインを学んで某美大へ。卒業後は企画を学びに代理店に就職。 プランナーという名の何でも屋だったので、マンガ連載や似顔絵作成など、まったく関係ない能力が色々と身につく。ライターとしては勉強中。 今より約10kg以上も太っていた過去が…! 自力で食の勉強をするうちに大の料理好きに。今は痩せた幸せと玄米を噛みしめている。 料理好きが高じて最近では釣りや陶芸、包丁も柳刃や出刃まで揃えて自分で研いだりしているが、「女子力っていうか、凝り性なおじさんに近いよね」という友人の指摘は概ね間違ってはいないと思う。
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